LOADING

logo

Columnコラム

池谷先生に聞く
朝ジュース生活のすすめ
#1
血管力を上げると見た目が若返り、健康寿命が延びる!解説・監修:池谷 敏郎(医学博士)
撮影・編集:山田 真弓

血管力を上げることは、脳卒中や心筋梗塞などの「血管事故」を防ぐだけでなく、認知症やガンの発症リスクを下げることにも役立つ可能性があります。また、体のすみずみの細胞への酸素と栄養の安定供給を支えて各臓器の機能を正常に維持し、免疫力を高めるともに肌のコンディションを良好に保つことにもつながります。

そこで、“血管を鍛えると「超」健康になる!と唱える医師、池谷敏郎先生に、血管力を上げるメリットと、そのノウハウについて、解説してもらいました。

前編では血管力の重要性について、後編では、血管を強くする食事法について、池谷先生が毎日の習慣としている朝ジュースを交えてご紹介します。

血管ケアは、自覚症状の出ない「未病」の段階が勝負!

私たちの体は、約37兆個の細胞からできていると言われています(※1)。その一つ一つの細胞に酸素や栄養を運んでいるのは血管内を流れる血液です。どんなに良い栄養を摂っても、それが最終的に血流とともに各臓器に運ばれなければ意味がありません。

突然死や後遺症の原因となる脳卒中や心筋梗塞は、脳や心臓を養う「血管」が破れたり詰まったりして発症します。このような“血管事故”は、加齢や喫煙などの悪しき習慣、そして高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病が原因となって進行する「動脈硬化」が元となって発生するのです。

東洋医学では、病気を発症する前の段階を「未病」と呼びます。血管の内側の壁にプラークというコブを生じる動脈硬化は、まさに未病といえます。動脈硬化は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状なく10年~20年かけて密かに進行します。加齢に伴って生理的に進行する動脈硬化は致し方ないのですが、その進行を早める生活習慣は未病の段階から改めることが大切です。

動脈硬化が進む過程で生じるプラークは、やがて傷つき血栓の引き金となって血管を閉塞します。また、動脈硬化によって血管壁が脆くなれば、血圧の上昇に耐えられず破れて出血を引き起こします。このような血管事故を、未病段階で防ぐことがとても大切なのです。

※1:NIH(米国国立衛生研究所)「An estimation of the number of cells in the human body」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23829164/

図表:動脈硬化図表:動脈硬化

血管年齢が若返れば、老け顔や何気ない体調不良も改善する!?

悪しき生活習慣を正し、バランスの良い食事や運動、良質な睡眠を心がけると、動脈硬化のリスクである生活習慣病の改善に大いに役立ちます。その結果、動脈硬化の進行にブレーキがかかり、実年齢を上回っていた血管年齢が若返ることも少なくありません。

血管年齢の若返りは、動脈硬化のリスクの軽減を意味します。そして、血管年齢の若返りには、さらなる嬉しい“おまけ”がついているのです!

その“おまけ”とは、見た目の若返りと、体の不調の改善です。

動脈硬化の原因となる生活習慣病を併せ持つ病態として、お腹に内臓脂肪がたまるメタボリックシンドロームがあります。メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積を背景に、糖尿病、高脂血症、さらに高血圧などの生活習慣病を複数併せ持つ病態です。つまり、血管年齢を若返らせるということは、内臓脂肪を減らして“脱メタボ”を目指すことになるのです。言い換えれば、ぽっこりお腹を解消し、代わりに筋力を身につけて若々しい体型を手に入れるということです。

さらに、血管年齢の若返りに伴って改善した血液循環は、肌や髪のコンディションを若々しく保つことへとつながります。

また、血液循環の改善は、肩こりや腰痛、末端冷え性などの体調不良の軽減にも大いに貢献してくれます。

見た目の若返りや体調の改善は、その後の血管力アップのモチベーションを保ち続けることにとても役立ちます。こうして、毎日を若々しく健康的に過ごすことで、最終的に健康寿命を延ばせれば、素敵な人生となるに違いありません。

詳細は、私の著書『老いは止められる』(2020年9月発売/エクスナレッジ)にわかりやすくご紹介してありますので、ぜひご参照ください。

『老いは止められる』

「血管の炎症」が血管年齢に影響!?

血管年齢を若返らせると、同時に見た目も若返ります。その理由は、カッコ悪いメタボ体型の解消と肌への血液循環の改善にあると述べました。ところが近年、血管年齢の若返りと見た目の若返りの間には、ある共通点が存在することがわかってきました。

それが、「抗炎症」と呼ばれるものです。

動脈硬化は、血管壁に生じた異物(酸化して変性したLDLコレステロールなど)と免疫細胞との戦いである「炎症」によって進行します。そして、外見上の老化もまた、肌あれとして皮膚に生じる「炎症」によって進みます。このように、体内に生じる慢性的な炎症は、様々な臓器の老化に関わっているのです。

血管年齢を若返らせるための様々な生活習慣の改善は、血管壁に生じた炎症を抑えること(抗炎症)に役立ちます。つまり、同時に肌に生じる炎症の抑制にもつながる可能性があるといえます。

こうした体内の炎症を抑えるカギを握るのが食生活であり、慢性炎症のきっかけとなる内臓脂肪を溜めすぎないように、糖質や脂質の取りすぎを防ぐとともに、摂取する脂質のバランスを整えることがとても大切です。

油、つまり脂肪を構成している要素である脂肪酸は、構造的な違いから飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。このうち、一般的に肉や乳製品に多く含まれる脂肪酸を飽和脂肪酸と言います。一方、植物や魚の脂に多く含まれるのが不飽和脂肪酸です。

飽和脂肪酸は体にとって重要なエネルギー源で、不足すると血管がもろくなり、脳出血を起こすリスクがありますが、摂り過ぎるとLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が増えてしまうので、動脈硬化が進んで心筋梗塞を招く危険性があることで知られています。

不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられます。

一価不飽和脂肪酸(オメガ9脂肪酸)はオリーブ油に多く含まれるオレイン酸は、血液中のHDL(善玉)コレステロールを減らすことなしにLDL(悪玉)コレステロールを下げる効果があり、動脈硬化を予防する効果あると考えられています。熱にも強いので、加熱調理にも向いています。

図表:脂肪酸分類図図表:脂肪酸分類図

多価不飽和脂肪酸は、さらにn-6系(オメガ6脂肪酸)とn-3系(オメガ3脂肪酸)に分けられます。n-6系脂肪酸であるリノール酸は、体内でアラキドン酸に代謝されてプロスタグランジンE2,ロイトコトリエン4といった炎症を強く引き起こす物質を産生することがわかっています。リノール酸は、大豆油、ゴマ油、ヒマワリ油、コーン油などに多く含まれており、家庭のみならず外食産業でも一般的に使われています。

市販されているスナック菓子や菓子パンなどの食品にも多用されているため、近年は摂り過ぎの弊害が目立つ傾向にあります。リノール酸をオレイン酸に換えた場合、炎症が起こりにくかったという研究結果もあることから、家庭の料理に使う油を、リノール酸豊富なサラダ油から、リノール酸の含有量が少なくオレイン酸がメインのオリーブオイルへ変更すれば、炎症の緩和に役立つ可能性があります。

また、同じ不飽和脂肪酸であっても、n-3系脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのn-3系脂肪酸は、n-6系脂肪酸の代謝と競合して強力な炎症を引き起こす物質の産生を低下させる「抗炎症作用」を有することも明らかとなりました。さらに、n-3系脂肪酸は、動脈硬化を防ぐ生理活性物質のアディポネクチンを増加させ、炎症抑制にも作用していることも報告されています。EPAとDHAは、サバ、サンマ、マグロ、イワシ、アジなどの魚に多く含まれており、これらの魚を食べることで効率よく摂取することができます。魚以外には、亜麻仁油やエゴマ油にもn-3系脂肪酸であるαリノレン酸が豊富に含まれています。ただしn-3系脂肪酸は、熱に弱いので加熱せずに利用する必要があります。(※2)

※2:国立研究開発法人 国立国際慰労研究センター 臨床研究センター「脂質の種類と糖尿病」
https://ccs.ncgm.go.jp/010/020/20160229160227.html

朝ジュースで血管に起きる「炎症」を防ぐ、抑える

しなやかな血管を維持するために、我が家で毎朝欠かさずに続けているのが「朝ジュース」です!人参とりんごをスロージューサーで絞り、少量のレモン汁と小さじ1杯のオイルを加えて作ったフレッシュジュースを毎日の朝食のメインとしているのです。オイルにはn-3系脂肪酸であるエゴマ油や亜麻仁油を用いれば、抗酸化作用を発揮してくれます。しかし、EPAとDHAが豊富な魚料理を積極的に食べているのであれば、風味の良いエキストラバージンオリーブオイルを使ってもいいでしょう。そして人参とりんごをよく洗い、皮ごとジュースにすれば、抗酸化作用を有するビタミンとファイトケミカル・ポリフェノールを豊富に摂取することが可能となり、酸化ストレスにより引き起こされる炎症を抑えることに役立ちます

さらに、ジュースに含まれる水溶性食物繊維は、その後に食べる炭水化物、糖質の急激な吸収をおさえ、内臓脂肪の蓄積や酸化ストレスの原因となる食後高血糖を防ぐ効果も期待できるのです。

朝ジュースは、適度な糖質に加えて不足しやすい食物繊維やビタミン・ミネラルの供給源となります。そして、ジュースに加える脂質をアレンジすれば、血管や肌の老化に関わる炎症を抑えるように働く脂質のバランスをキープすることに役立つのです。

朝食を抜いてしまうことは、体調不良のみならず、かえって肥満や糖尿病のリスクを高めてしまう可能性があります。適度な糖質と脂質とともにバランスの良い栄養素を摂取する手段として、朝ジュースを中心とした食事法がオススメです!
(後編につづく)

池谷敏郎先生
##プロフィール
池谷敏郎(いけたに・としろう)

医学博士。池谷医院院長。http://www.iketaniiin.com/
東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医。

1962年4月10日 東京都生まれ。

1988年、東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局し、血管、血圧の研究を行う。 1997年、池谷医院理事長兼医院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管、心臓などの循環器系の専門家としてテレビ、ラジオ、講演会など活動の幅を広げる。食事やオリジナル運動などの生活指導を丁寧に行い、患者を真の健康へ導くエキスパート。『「血管を鍛える」と超健康になる!』(三笠書房)、『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える 内臓脂肪を落とす最強メソッド』(東洋経済新報社)など著書多数。